ジェントルマンこそ粋であれ。<br>英国紳士のクルマとファッションの妙。

ジェントルマンこそ粋であれ。<br>英国紳士のクルマとファッションの妙。

JOURNAL / Culture #1

ジェントルマンこそ粋であれ。
英国紳士のクルマとファッションの妙。

2018.09.13

「紳士たるもの」とはよく言ったもので、いつの時代も男性は所作や身だしなみに気を使うもの。TPOを心がけた服装・振る舞いを意識することはもとより、細かな持ち物ひとつひとつに対するこだわりもまた、理想の紳士像を構築する重要なピースとなるというのは言わずもがな。

紳士の本場・英国の製品に目を向けてみると、自身の所有欲を満足させる品質はもとより、根底にあるのは相手に対する心遣いであるようにも思われる。ことクルマとファッションにおいては顕著で、高級車の代名詞であるロールス・ロイスにおいても、名門紳士服店が軒を連ねるサヴィル・ロウで手にするスーツにおいても然り。各製品からは手にする人に対する作り手の心遣いとともに、手にした人が第三者に対して与える心遣いまでもが考慮されているように感じられる。そうした細かな配慮は、日本の感覚でいう“粋”とよく似ており、図らずしもコミュニケーションのフックにもなりうる重要な要素でもある。ビジネスや初対面の相手とのコミュニケーションを加速させる“語れる”ポイントは、言わば“英国風の粋”。そうしたエッセンスが随所に盛り込まれているのだ。

そのひとつが、英国のクルマによく見られる「ブリティッシュグリーン」と呼ばれる緑のカラーリング。アストンマーティン、ジャガー(ジャギュア)、ミニ、ランドローバー、ロータスと、各社微妙に色は異なるものの、英国のクルマにはシックな深い緑を基調としたものが多く見られる。これは国際自動車連盟(FIA)が過去に国別の自動車レースを開催した際、それぞれの国に色を指定していた時期があり、英国が緑であったことに起因する。現在ではナショナルカラーの指定はないものの、その名残として各社ブリティッシュグリーンのクルマをラインアップしており、現在も英国車を象徴する色として親しまれている。

クルマのデザインにおいても、各社ディテールに心遣いを感じる英国風の粋な要素を盛り込んでおり、なかでも顕著なのはアストンマーティンだろう。映画『007』シリーズのボンドカーに起用されたことでも知られるこのメーカーは、ボディレイアウトの随所に1:1.618の黄金比をとり入れているという。さらに、もうひとつのポイントは白鳥が羽を広げたように見えることから名付けられた「スワンドア」と呼ばれる独自機構のドア。縁石の近くで展開しても接触することなく乗降が可能というもので、まさにこの機構こそ、粋な心遣いを体現する計らいであるともいえるだろう。

英国車の魅力を挙げれば枚挙にいとまがないが、そのことは英国ファッションも同様。英国御三家ことグレンロイヤルやエッティンガー、ホワイトハウスコックスのカバンに、マッキントッシュのゴム引きコート、バーバリーのトレンチコート、グローバーオールのピー・コート、スマイソンの名刺&名刺入れ、スウェイン・アドニー・ブリッグやフォックスの傘……。そのどれもが細部にまでクラフトマンシップが光る老舗の定番品であるとともに、ビジネスシーンで愛され続ける銘品として知られるものばかり。

このように、長きに渡り多くの紳士たちに愛されてきた英国風の粋は、現代の男性たちのライフスタイルにおいても脈々と受け継がれている。クルマやファッションのみならず、自身の身だしなみにおいても言えることであり、整髪料やカミソリひとつへのこだわりも同様。相手への心遣いとして清潔で健康的な肌を維持することもまた、スマートな男に欠かせない所作であり、お作法なのだろう。

中澤範龍 Noritatsu Nakazawa

1982年千葉県生まれ。EditRealにて取締役を務めながら編集者として活動。紳士の釣り倶楽部「Gentleman's Fishing Club」所属。アウトドアやファッションカルチャー誌を中心に、ライターとしても執筆中。

1982年千葉県生まれ。EditRealにて取締役を務めながら編集者として活動。紳士の釣り倶楽部「Gentleman's Fishing Club」所属。アウトドアやファッションカルチャー誌を中心に、ライターとしても執筆中。

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