HIROSHI TANAHASHI: Strong vision

HIROSHI TANAHASHI: Strong vision

JOURNAL / Five Roads #1

HIROSHI TANAHASHI: Strong vision

2019.04.25

[新日本プロレス所属 棚橋 弘至のインタビュー]

Individuality=「個性」。だが、FIVEISM × THREEが想い描いているのは、そんな狭い意味に限定されたIndividuality=「個性」ではない。
それは、「既成概念を超越したLimitlessな自己表現」であり、「男だからとか、女だからとか、もう若くないからとか、誰かの価値観や世の中の風潮に合わせて生きている暇なんてない」という意思表明だ。
また「Individualityは決して完成されず、時の流れや自身の成熟とともに変化し、いつでも、誰でも自己の中に新しい可能性を秘めている」という信念を再確認するためのものである。

FIVEISM × THREEでは、ブランドコンセプトのIndividuality=「個性」を体現している人物のことを“Ikon(アイコン)”と称している。Ikonとはスペルミスではなく、唯一無二の独自性を持つ人物に対する尊敬の意味を込めた表現である。

今回紹介する“アイコン”はプロレスラー、棚橋弘至。1999年の春、立命館大学法学部を卒業した彼は新日本プロレスに入門している。入門から約1年後の2000年代になると、新日本プロレスは長い低迷期を迎えてしまう。プロレス全盛期時代とは異なる環境での試合が続き、メディアではさまよえる名門とも、崩れゆく老舗とも例えられた。そんな団体が見事なまでのV字回復を成し遂げることができたのは、観客からブーイングを浴びながらも自身を〝100年に一人の逸材〟と称して闘い続けた棚橋弘至の存在があったからに他ならない。

今、新日本プロレスの試合では会場いっぱいの歓声が湧き起こっている。団体の低迷期に聞こえていた棚橋へのブーイングは終わった。10代の女子までもが涙を流しながら棚橋弘至の闘いに胸打たれている。

そんな彼にFIVEISM × THREEは最大限の敬意を払いたい。彼には人々を熱情の渦に巻き込む、唯一無二の輝きがある。FIVEISM × THREEのブランドコンセプトと棚橋弘至の在り方は方向性が一致している。

本連載は、FIVEISM × THREEのキーエレメントである「Five Roads to Individuality」を追求していく。


●「Limitless possibility(無限の可能性/自分で限界を設けず、新たな可能性へと挑む姿勢)」
●「Power of simplicity(シンプルなものの強さ/余分なものを削ぎ落として、辿りついた境地)」
●「Purity of thought(純粋な想い/無邪気に夢を見ること/偽らない気持ち、愛)」
●「Strong vision(確かなヴィジョン/在りたい未来を描くこと/信念を持つこと)」
●「Self-expression(自己表現/自分を偽りなく自由に表現すること、それを行う勇気)」


今回は、この中からFIVEISM × THREEと棚橋弘至が最も強く共鳴している「Strong vision(確かなヴィジョン/在りたい未来を描くこと/信念を持つこと)」について掘り下げていく。


FIVEISM × THREE(以下:F)棚橋さんがデビューされた当時は将来に対してどのようなヴィジョンをお持ちでしたでしょうか。

棚橋弘至(以下、T)実は、特に何も想い描いていなかったんですよね。当時は闘魂三銃士の武藤さん・蝶野さん・橋本さんがすごい人気で毎年東京ドームでの対決が満員になっていて、自分も新日本プロレスでプロレスラーになったら、ところてん式にスターになれるものだとしか思っていませんでした。

でも、新日本プロレスのいい時期というのは長く続かなくて、人気のあるプロレスラーの方々が抜けていき、集客力が落ちていきました。その時になって初めて自分は将来的にどうなりたいのか、どういう風にスターになって新日本プロレスを盛り上げていくのかということについて具体的に考えるようになりました。このままじゃ絶対にスターになれないって思ったのがきっかけで、そこから意識を改めました。

Fそういった厳しい状況の中でキャリアを積み重ねてきて、現在に至るまで忘れることなく常に心に抱き続けてきたことがありましたら教えてください。

T僕たちはプロレスを見せないといけないなという想いです。プロレスにはプロレスの良さがあります。2000年代に入って総合格闘技が人気になると総合格闘技のようなプロレスの試合も生まれたりしました。でも、やはりプロレスはプロレスの良さで勝負していきたいということです。

Fそのプロレスの良さとは?

Tやられてもやられても立ち上がっていく。そういう泥臭いところがプロレスの良さだと思います。プロレスというのは、虚勢を張る競技。お前の技なんて効かねえよ!もっと来いよ!というもの。ちょっと抽象的で分かりづらい表現なのかも知れませんが、パワーやスピードだけではなく、人間力を競い合っているというか……。

F確かに相手の技をしっかりと受け止めた上で自分の技を返していくという試合中の流れは、他の格闘技では見られないものですね。

T猪木さんが言われていたのは、風車の理論。相手の力を「9」引き出してから、自分の力を「10」出して勝つというものです。そうすれば相手のいいところが出て、自分のいいところも出て、試合が盛り上がり、お客さんも喜ぶ。もしも自分が「10」だったとしても相手が「1」だったら、その試合は面白くない。

F今、猪木さんのお話がありましたが、新日本プロレスが低迷していた時期、棚橋さんは道場に掲げられていた猪木さんのパネルを外したというエピソードで知られています。その時はどのような思いがあったのでしょうか。

T猪木さんが新日本プロレスを立ち上げた際の理念は十分に分かっていますし、猪木さんのネームバリューに頼っていたのではいつまでも生まれ変わることが出来ないと思っていました。それ以外にも僕がプロレスラーのヴィジュアルだとか、試合後のパフォーマンスだとかを変えてきたというのもあって古くからの新日本プロレスファンにはブーイングを浴びせられ続けました。でも、猪木さんのパネルを外したのが最も象徴的なことだったかも知れないです。あの事が新日本プロレスの新しい道を切り拓くきっかけになったと思っています。

F組織の中にある既成概念やしがらみを取っ払って行動を起こした棚橋さんの強い気持ち、その「Strong vision」はFIVEISM × THREEのコンセプトや考え方ともリンクしていますね。

T猪木さんがずっと言い続けていたのは、「俺が作ったパイをいつまでも取り合ってるんじゃないよ」ということでした。そのパイの話に対して、「では、僕が新しいパイを持ってきます」という返しをしたレスラーは後にも先にも自分だけですからね(笑)。

FFIVEISM × THREEのコンセプトは、Individuality=「個性」です。是非ともお聞きしたいのですが、プロレスラー棚橋弘至の個性とはいかなるものだと考えますか?

T僕が新日本プロレスに入って何年か経ったところで初めてつけてもらったキャッチコピーは、「太陽の天才児」でした。新日本プロレスを盛り上げてくれよということでキャッチコピーをつけてもらったのですが、この「太陽の天才児」に苦しめられたというか……。僕は運動神経がずば抜けていいわけではないし、天才という言葉には違和感がありました。そこで、天才は辞めて逸材でお願いしますと会社に直談判しました。「100年に一人の逸材」というキャッチコピーは自分でつけたものです。 このように自分からプロレスラーとしてのアウトラインを発信していったのはおそらく日本のプロレス界だと僕が初めてだろうなと思っています。外見的にも、より棚橋弘至のプロレスラー像が華やかに見えるようデザイナーさんにオーダーしてコスチュームをデザインしてもらいました。そういうところは他のレスラーよりもかなり早い段階で意識していましたね。

Fプロレスラー棚橋弘至としてIndividuality=「個性」を発揮できたと印象に残っている試合はありますでしょうか?

T海外から凱旋帰国してきた日本人レスラーと戦ったことがあるのですが、この時も僕は大ブーイングを受けました。対戦相手がいかにも男臭くて新日本っぽいプロレスラーだったので彼への歓声が集まる中、自分としては思惑どおりの試合ができていると考えていました。プロレスは対戦相手がいないと輝けないので、そこに気づいてからの僕は相手の技で盛り上げてもらって最後は勝つという試合運びをするようになっていましたね。若い頃は自分の技で盛り上げたい、かっこいいところ見せたいというのが先に立ちますが、僕はかなり早い段階でプロレスは一人ではできないということに気づいていましたから。

Fちなみに新日本プロレスの低迷期に地方への営業活動にも率先して出かけてきた棚橋さんはファンサービスが厚いというイメージもあります。

T自分としては、とにかくお客さんに楽しんでもらいたいんです。日常で何かイヤなことがあっても、会場に来たら声を上げて楽しんでほしい。試合ではリング上と客席でエネルギーの交換があります。僕はプロレスの会場はパワースポットだとずっと言い続けています。来ると元気になれるし、それを日常に持って帰ってもらいたい。棚橋が頑張っていたから俺も頑張ろうというような関係性が築けたら一番いいですね。ファンの方々への感謝の気持ちはずっと大事にしています。試合後の「愛してま〜す」(※メインイベントで棚橋選手が勝った際にお客さんに向かって叫ぶ言葉)もありがとうございますの最上級というか、最大級の感謝を表したものです。

F棚橋さんが在りたい未来をイメージし、強い信念を持つために日頃から意識されていることはありますか?

T日常を修行の場にできたら、とは思っています。試合やインタビューや取材が続くとアウトプットばかりでインプットが足りなくなるんですよ。だから普段の生活さえもインプットの時間にすることができたらなと思っています。例えば地方で出会ったマッサージ師の方との会話です。「僕のいいところはポジティブなところなんです」と何気なく話したら、「あなた、それは危険よ」って言われました。「ポジティブっていうのは、今、目の前にある問題を見ないで次に進んでるだけよ。それでは何も変わらないから、今、目の前にあるものをあるがままに受け入れることから始めなさい」って。このような気づきを得られるよう、普段から常にアンテナを張っておきたいですね。


※後編ではさらに棚橋さんの人となりや、FIVEISM × THREEのブランドコンセプトを体現されている“アイコン”としての姿について詳しくお聞きしていきます。

<後編は5月下旬公開予定>

棚橋 弘至

1976年11月13日、岐阜県大垣市生まれ。
1998年2月に新日本プロレスの入門テストに合格。立命館大学法学部(在学中はプロレス同好会に所属)を卒業後の1999年4月に晴れて新日本プロレスに入門。その半年後の10月10日、後楽園ホールにて真壁伸也(現:真壁刀義)戦でデビュー。
2006年7月、IWGPヘビー級王座決定トーナメントを制して同タイトルを初戴冠。
2018年9月公開の映画『パパはわるものチャンピオン』では主演を務め、2018年度プロレス大賞MVPおよび、第19回ビートたけしのエンターテインメント賞特別賞を受賞するなど、リング外でも活躍をみせている。

1976年11月13日、岐阜県大垣市生まれ。
1998年2月に新日本プロレスの入門テストに合格。立命館大学法学部(在学中はプロレス同好会に所属)を卒業後の1999年4月に晴れて新日本プロレスに入門。その半年後の10月10日、後楽園ホールにて真壁伸也(現:真壁刀義)戦でデビュー。
2006年7月、IWGPヘビー級王座決定トーナメントを制して同タイトルを初戴冠。
2018年9月公開の映画『パパはわるものチャンピオン』では主演を務め、2018年度プロレス大賞MVPおよび、第19回ビートたけしのエンターテインメント賞特別賞を受賞するなど、リング外でも活躍をみせている。

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